今月の一冊
2004年バックナンバー
「雨の降る日曜は幸福について考える」 橘玲著 幻冬舎 「あなたの会社にお金が残る裏帳簿のすすめ」 岡本史郎著 「Good Luck」 アレックス&フェルナンド著 「上司は思いつきでものを言う」 橋本治著 「掟破りの成功法則」 夏目幸明著 「愛のバタバタ貧乏脱出大作戦!!」 九鬼政人著 「13歳のハローワーク」 村上 龍著 「オヤジにならない60のビジネスマナー」 中谷彰宏著 「会社にお金が残らない本当の理由」 岡本 吏郎著 「人はなぜ足を引っ張り合うのか」 斉藤勇著 「寂聴あおぞら説法T・U」 瀬戸内寂聴著 「燃えよ剣(上・下)」 司馬遼太郎著 2003年のバックナンバーへ 2002年のバックナンバーへ
著者は幻冬舎刊「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」でベストセラー作家になりました。この本では、生命保険、年金、教育、医療、不動産のことを書いており、今まで誰も述べたことの無い 鋭い視点で書かれています。
以下引用です。
生命保険はわずかな保険料で大きな保証を得られる優れた金融商品である。
なぜ、こんな魔法が可能になるかというと、加入者のほとんどは保険金を受け取れずに損をするからだ。どんな凄腕の営業マンでも、損をする商品を売るのは難しい。そこで保険会社は生命保険に貯蓄性を加味することを考えついた。
「大きな保障」を売りにしている終身医療保険が登場しているが、将来のインフレを考えれば、数十年後に受け取るかもしれない日額5000円の給付金に一体どのくらいの貨幣価値があるか分からない。日本の医療機関の平均入院日数は短くなっており、長期入院に備えて割高な保険料を払うのは無駄が多い。
私たちは、定年後に備えて資産を蓄えようとする。しかし、いったいいくら貯蓄があれば安心できるだろう。65歳時の平均余命を20年とし、生活費を年間400万円と考えれば、8000万円の蓄えがあればいい。定年後の生活設計というのは、要するに、この資金をいかに調達するかという問題だ。厚生年金と企業年金で月額30万円に給付があれば、1000万円程度の貯蓄で十分やっていける計算になる。これなら普通のサラリーマンの退職金でまかなえるだろう。
【感想】
年末調整の保険料控除申告書を拝見すると、数社の保険会社に月10万円以上も保険料を支払っている人が結構います。うらやましい反面、「保険の見直しをした方がいいのではないか」と余計なことを考えてしまうこの頃です。
これから死ぬまで最低いくら稼がなければいけないのか?と考えました。65歳で8000万用意するためには、私の場合は国民年金(年金月6.5万円)で、退職金も無く、ましてや企業年金もないので、この計算でいくと、65歳の段階で6500万円貯蓄がないといけない計算になります。収入の2割を貯蓄するとして、あと3億3千万円稼がなければいけないのです。
うーん、背筋が寒くなってきました。
やはりサラリーマンの方が厚生年金や退職金を考慮すると老後は有利かもしれません。全国の自営業者の皆さんこんな事にめげずにがんばりましょう。(2004年12月)
「あなたの会社にお金が残る裏帳簿のすすめ」
岡本史郎著 アスコム
前作の「会社にお金が残らない本当の理由」がベストセラーになり、
この事務所ニュース(2004年4月号)で取り上げました。
今回はその続編です。
以下引用(一部修正)です。
「決算書」は銀行と税務署のために作られるものだ。
「決算書」の出ている「利益」というのは実は利益ではない。
あれは「税金を払うために計算した数字」でしかないのだ。
なぜ、利益が出ているのに、お金は増えないか?
それは利益が出ていないからである。
「税金をとるための数字」を基本にした経営では意味がないのだ。
ビジネスの一番の目的は「有利なポジション」を手に入れること。
そのために「内部留保」して自社を有利な位置に置く。
会社からもらう役員報酬は、節税のために会社の利益をゼロに近づけているだけだから、
もらった報酬の一部は会社に戻さなければいけない。
経常利益(600万円)+役員報酬(1800万円)=全部の稼ぎ(2400万円)である。
この会社を個人事業とすれば、2400万円稼いだことになる。
全部の稼ぎを3分の1にして、それを国と家庭と会社に分ける。
国 =800万円を所得税・住民税・社会保険料に支払い、余った
お金を戦略予備費としてとっておく。
家庭=次の800万円は家計費として家庭に入れられる金額
会社=最後の800万円は会社の内部留保額とする。
家計費を経営成績から算出しながら管理し使っていく。
これができるだけでも経営は変わってくるはずだ。
【感想】
私のような個人事業主には大変参考になります。
今まで、家計にいくらお金を入れて、
事務所にいくらお金を残していいかわかりませんでした。
でも1/3を会社(事務所)の内部留保にとっておくと、生活費が足りな
くなるのは、それって売上が足りないからでしょうか?(2004年11月)
「Good Luck」
アレックス・ロビラ、フェルナンド・ド・トリアス・デ・ベス著 田内志文訳 ポプラ社
70万部突破のベストセラー。
中世の騎士が森に魔法のクローバーを探しに行く7日間の寓話です。
主人公は騎士であるシドとノットです。
シドは前向きに少しの可能性を信じ、クローバーを探し続けました。
一方、ノットはやみくもに突き進み、偶然を信じながら森をさまよい続けました。
結果はシドが魔法のクローバを手にします。
読んだあと、自分の日々の生活に振り返ると、自分は、ノットのようなやみくもに、
偶然や運を信じて生きているのではないかと、反省させらました。
以下引用です。
「幸運を作るというのは、チャンスに備えて下ごしらえをしておくこと。
だが、チャンスを得るには、運も偶然も必要ない。」
「下ごしらえを先延ばしにしてしまえば、幸運は絶対に訪れてくれない。
どんな大変でも、今日できることは今日してしまうこと。」
120ページほどで、行間も多く、2時間もあれば読んでしまいます。
値段も999円と割安です。
ぜひ通勤もお供に一冊いかがですか?(2004年10月)
今年の4月出版以来、28万部を売り上げています。
著者はまともな就職をしたことが無いにも関わらず、上司と部下の関係をこうも簡単に分析していまう「橋本ワールド」は相変わらずです。
埴輪会社の比喩から始まって民主主義、儒教へと話が飛ぶのが難点ですが、鋭い視点で会社の内部を述べています。
以下引用です。
部下が建設的な提案が上司の思いつき回路を作動させる。
上司が思いつきでものをいうのは日本のサラリーマンの組織的な問題だからです。
会議は「前提の確認」で終わる。
日本の会議は議論するところではなく、承認をするところ。
だから会議の締めの言葉は「そういうことでよろしく」になるのです。
「何にも決まっていないじゃないか」と思っても終わりなのです。
最大の問題は現場と会社の間の分裂が生じている。
会社と現場との間の距離は当然のものとなって、
会社は「会社であること」を自己目的した組織になります。
総務とは言ってみれば「会社における専業主婦の妻」です。
会社の基本目的である「利潤を上げる」という業務にタッチしていません。
「利潤が上がっている」という状況を前提にして、
その利潤で「会社という機構を大きくする、管理する」という役割をもっぱらします。
部下が企画書を上司に提出しました。
上司は「なんだかよくわからん」といって突っ返して来ました。
部下は「上司の頭が古いんだ。頭が悪いんだ。」と思うでしょう。
企画書というのは「ある程度なら知っていて分かるかもしれないけれど、
実は知らない可能性のある上司に分からせるもの」なのです。
だから「上司の頭が悪い」というのは言い訳になりません。
あなたは上司に分かるよう書かなければならないのです。(2004年9月)
「掟破りの成功法則」(破天荒創業者のマジ語り)
夏目幸明著 PHP研究所
まえがきより
資金に恵まれた人物などは皆無だ。何か特別な技術があったわけでもない。
生まれた家など、ますます関係ない。学歴?本書には高校を出ただけの人物
がたくさん登場する。中には大卒の人物もいるが、特に成功の原因と直接関
係はない。この本は無一文からはじめ、ビジネスを通じて世の中を変えた、全
14人の創業者が「ビジネス世界の突破法」を語り尽くしたものだ。
《感想》
この本は
リサイクルショップの「生活倉庫」堀之内九一郎氏
京都の有名なタクシー「MKタクシー」青木秀雄氏
AVソフトの「ソフト・オン・デマンド」高橋がなり氏
漫画古本専門店の「まんだらけ」古川益蔵氏
社長が重度の障害でヘルスケアビジネスを展開中の
「ハンディネットワーク」春山満氏など、
人生のどん底(本人はどん底と思っていないかもしれない)から這い上がって創業した人たちのドキュメンタリーである。
14人に共通しているのは「底抜けに明るい」「最後まであきらめない」ことです。
この本を読むと、「何をくだらないことで悩んでいるのだ!
人生は一度きりだぞ!」と胸倉をつかまれて、ビンタを張られたような感覚を味わいます。
栄養ドリンクのように効き、元気が出てきます。
皆さんも一本(冊)いかがですか。(2004年8月)
(「バタ・貧」社長が、忙しいのに儲からない本当の理由)
抜粋@
まじめで忙しいのに儲からない人のことを「バタ・貧(バタバタ貧乏)」、反対に、時間もお金もある幸せ者を「ブラ・金(ブラブラ金持ち)」です。「バタ・貧」は生活習慣病だといえます。ある意味まじめ人間ほどかかりやすく、直りにくい病気ともいえます。
なぜ、社長は「バタ・貧」を続けるのでしょうか?
一言で言うとそれはすべて、自分と周囲そして社会への「言い訳」なのです。自分がこれだけ汗流して、時間も目一杯使って休みもとらずにまじめにがんばっているのは、「家族のため」「顧客のため」「社員のため」そして「社会のため」だという言い訳です。言い訳も「やっぱりお金がないから仕方がない」から始まって「自分がやらなけれれば」→「バタバタ忙しい」→「家族のため」→「顧客のため」→「社員のため」そして今度は「景気が回復したら」→「政治が悪いから」と自分以外のもののせいにし、果ては「やっぱりお金がないからできないんだ」と言い訳は循環します。結局、「バタ・貧」社長は「変化を恐れている」だけでした。変化することの方法自体考えたくない、
面倒だし、嫌いだし、苦手だから「頭を使いたくない」ということに集約されるようです。
社長の本来の仕事は「思考代行業」なのです。
お客様のそして社員の「嫌なこと」=「考えること」を代行するのが社長の仕事なのです。
抜粋A
「バタ・貧」社長のタイプはいくつかあり、その一つが「独り相撲型」です。
何でもかんでも自分がやらなくてはは気がすまないタイプです。
一見、何事も抜かりなくやってくれるので勤勉まじめで「完璧主義」の社長だと移りますが、実際は人に任せることができない「臆病者」の要素があります。このタイプのバタ・貧社長の問題は「自己重要感」にあります。
つまり、いつも誰かに認められ、頼られ、必要とされていることに価値観があるので、すべて自分に注目が集まるように、あらゆる仕事を抱えてしまうのです。
そしてそれは、他の誰かに仕事を任せてしまうと、「自分は必要ないのではないか?」と自分の存在意義が見出せなくなってしまうという、自分自身の弱さの裏返しである場合も多いです。
《感想》
他人事のようにして読むと大したことのない文章ですが、自分に当てはめて読むと見事に当たっていることに気がつきました。背筋が凍るような思いをしました。
私も「バタ・貧」で「独り相撲型」なのでした。(2004年7月)
100万部突破の大ベストセラー。
この本は様々な分野の職種(ハブ採り職人、ろうそく職人、便利屋等の特殊なもののある)が紹介されています
『いい学校に行って、いい会社に入れば一生安泰という時代は終わった。』
『子供が好きな学問や技術や職業などを早い時期に選ぶことができれば、そ
の子供にはアドバンテージ(有利性)が生まれます。』
『資格は目的ではなく手段である。残念ながらこの資格さえあれば「一生安泰」といわれる資格などない。ということは一生安泰という職業はもはやありえないことを意味する。医師や弁護士や会計士でさえ、これからは競争にさらされる。』
この本は2600円と高めですが、下手な就職本より、ためになります。
学生時代に「コンサルタントになりたい」と漠然と思っていました。具体的に何をしているのか知りませんでした。また、どうやったらコンサルタントになれるかわかりませんでした。
「こんな本があればよかったのに」と思いました。中学生や高校生のいる家庭の必読書です。自分の子供が年頃になったら読ませたい一冊です。(2004年6月)
「オヤジにならない60のビジネスマナー」
中谷彰宏 著 PHP文庫
面接の達人」で有名な著者で、毎年、70冊のペースで本を出しています。
彼は、身長180cm・容姿よし・高学歴・高所得で、同世代の私としてはジェラシーを感じます。
「人間から品性をとったものがオヤジです。そもそも品性のない人は「オヤジ」と呼ばれます。男性でも女性でも、若くても年をとっていても、誰でもオヤジになります。人間はほうっておくとオヤジになります。品性は努力しなければ身につかないからです。」
○オヤジはお箸はタバコで指差す
○オヤジは「ちょっと」「おねえさん」と呼ぶ
○オヤジは大股開きで座る
○オヤジは爪楊枝シーハーし、お茶で口をゆすぐ
○オヤジは、おしぼりで顔やメガネまで拭く
○オヤジは、すぐ年齢を聞く
○オヤジは人の話を聞かないで自分の話に変えてしまう
○オヤジはお客になると急に高飛車になる
○肩書きよりも品性で勝負しよう
みなさんも精神的なオヤジにならないように気をつけましょう!(2004年5月)
「会社にお金が残らない本当の理由」
岡本 吏郎著 フォレスト出版
税理士さんが書かれた本です。
@ ビジネスとは最大の利回りをえること。
A 役員報酬はあくまでも合法的な裏金である。一番の税金の節約は会社の利益を限りなくゼロまたは赤字にして、役員報酬を取ってしまうことです。節税のために多めに報酬をとるので、その一部は会社のお金です。会社の資金が足りなくなったらすぐ支出すべきです。だから役員報酬を生活のためにすべて使うのは間違っています。
B 労働分配率は役員と従業員を合わせて計算するのは誤り。私の経験則から役員報酬は20%、社員給与は30%、合計50%という分配が適正だと考えます。
C 一人当たりの経常利益が5万円。こんな数字の中小企業は世の中にたくさんあります。これは何を意味するのでしょうか。社員の年間給与5万円アップさせたら赤字ということです。一回みんなで温泉に行けば木っ端みじんになる。中小企業ではこんな経営が多いです。
私は、1人あたり200万円を最低基準にして経営するように言っています。
著者は会社の数字だけでなく、生活おいても以下のようなことを言っています。
目から鱗が落ちました。
独自の視点で中小企業の経営数字を捕らえており、新たな発見がありました。
でも、私は車も持っていなし、中古マンションのローンは終わり、保険は郵便局の「簡保保険」だけなのにお金が残らないのはなぜ?(2004年4月)
「会議をすればするほど、人の意見を偏らせる。集団で討議すると、保守的な人はより保守的に、挑戦的な人はより挑戦的になる。」
会議をすると結論が変な方向に行くことってありますよね。
「自分が重きを置いている「領域」で他の人が好成績を挙げた場合、他の人の好成績は自分をみすぼらしくさせ、自己嫌悪におちいらせ、自尊心を傷つけます。脅威を与える人間が、さして知らない人間なら気にならないが、親しい友人が自分より優れているとなると複雑な心理状態が湧く。」
だから近くにいる能力のある人を、ほめられないのですね。
有名な「囚人のジレンマ」の話しです。
ある凶悪事件(本件)の容疑者が二人、別件の軽い罪で逮捕された。二人は共犯とみられている。本件を立証する物証がありません。そこで警察側が容疑者に向かって次のような話しを切り出します。
「もしお前が本件の犯行を自白したら、それに免じて本件は問わず、しかも軽い刑で済ましてやる。もし、お前が黙秘を通して、相棒が自白した場合重罪となる。また、お前も相棒も黙秘した場合は、本件では起訴できないので別件の罪は軽くせず、刑法に従って起訴する。さあ、自白したらどうだ?」
犯人たちはお互い黙秘を通せば軽い刑(1年)ですみますが、自分が黙っていても相棒が自白した場合は重い刑になってしまいます。
皆さんなら自白しますか?相棒を信用して黙秘できますか?
普通なら重い罪になりたくないから、自白しますよね。これが悲しいかな人間の心理なのですね。
企業の人間関係でも同じようなことが入れるのではないでしょうか?(2004年3月)
人気作家だった瀬戸内さんは51歳のとき出家し、65歳で岩手の天台寺の住職となり、そこで1ヶ月に1回の法話を行っています。この本はその法話をまとめたものです。
「過去のことにくよくよしない、明日のことを思い煩わない」
「今を切に生きるとは、一瞬一瞬を一生懸命生きること」
「周りの人を幸せにするために。あなたは生まれてきたのよ」
「死は誰でも平等に訪れる」
「過信と驕りをつつしみ、私たちはどうして、何に生かせれているかを考える」
瀬戸内寂聴さんの本は私にとって、心のビタミン剤です。
皆さんもいかかですか?(2004年2月)
「燃えよ剣」(上・下)
司馬遼太郎著 新潮文庫
幕末の新選組を描いた司馬遼太郎の代表作です。
この本は土方歳三の男の美学で全編貫かれています。
年末から正月にかけて一気に読みました。
剣も一流ですが新選組副長で指導者としても一流でした。
以下は歳三のセリフの要約です。
「新選組は本来烏合の衆だ。ちょっと弛めればいつでもばらばらになるようにできいる。
どういうときにばらばらになるときか知っているかね。」
「副長が隊士の人気を気にしてご機嫌とりをはじめるときさ。副長がいい子になりがると、
にがい命令が近藤(隊長)の口からでる。自然憎しみや毀誉褒貶は近藤にゆく。
近藤は隊士の信を失う。隊はばらばらさ。」
時代は違いますが、今の組織にも十分当てはまります。(2004年1月)
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